北九州市内の親世帯とご本人世帯の2棟の住宅の提案

    住宅の計画で重要視していることの一つは「距離感」です。そこに住む人と社会の距離感、また近隣の環境との距離感、家族間の距離感をどの程度はかっていくかを考えて、そしてそれぞれの距離感つまり関係を紡ぎ合わせて一つのかたちをつくっていきます。もちろん、敷地の立地条件や住む人のライフスタイルや考え方によってその距離感は違いますので、ご家族ごとに異なった住宅になります。今回の計画案は、親世帯とご本人家族の世帯でそれぞれの住宅を建てるという条件のもと、2棟の距離感をどうはかるかも含めて計画しました。敷地は商業地域にあり、昔ながらの商店街や小さな店舗、中層の市営団地、住宅、駐車場などが新旧とも混在する場所です。敷地に面する一部は再開発によるマンションやテナントビル等の建設も考えられるため周囲が変質した状況の中でもここでの住む環境をできるだけ守り続け、そして2棟が連なる利点を生かし昔の面影を残した佇まいとしてまち並みに寄与できるような提案をしました。

    両側を壁で閉じたボリュームをいくつか並べて全体を構成・基本的な考え方も整理

    ある程度プラニングしたものに高さを与えてブロック模型を制作し、いろんな視点で確認

    ブロック模型の検討後、具体的に屋根をつくって見え隠れの状態や周囲との離隔の具合も含めて確認

    側面の細い路地からの様子

    道路からの2棟が連なる様子

    いつも住宅の設計で心がけていることは、住む環境を豊かにしたい、心地よくしたいということです。このコロナ禍をきっかけにリモート化により職と住や学と住が重なり、また外出も控えざるをえない状況を経験した人も多いと思います。住宅は単に住むための器ではなく、働く場所や学ぶ場所、自分の時間を長く過ごすといった多様な場所に見直されました。このコロナ禍がおさまったとしてもリモートで体験したスタイルは一つの選択肢として残り、住まいで費やす時間は長くなり、そして多様な場面が増え、なお一層豊かで心地よさが求められると思います。