平屋の木造住宅(SHS)の現況

    北九州市内で進行中の平屋住宅(SHS)です。現在は、審査機関による屋根工事の中間検査を終え、着々と工事進行中です。

    設計中に棟位置(架構)を検討していたLDK空間

    着工してからは早いものでもうここまできたのかーという安堵感が湧いてきます。設計の後半は、法的な許可や手続き、審査に想像以上に時間と手間がかかってしまい、やっと着工までこぎ着けたというのが本音のところです。

    これから建築を考えている方やその関係者の方の何らかのお役に立てばいいかなというところで、その許可や手続きを少し紹介します。ちょっと固い真面目な話です。


    1、市街化調整区域内の建築許可
    今回の敷地は市街化調整区域にあります。市街化調整区域内とは都市計画法で市街化を調整(抑制)する区域に指定されているため、その地域の公共的な施設や農林業業等に関わる建築等は建てられますが、一般的にはそれ以外は建築不可。ただし、今回は敷地が既存の宅地(地目)だったという点や既存集落内にあったという点で「市街化を促進するおそれがない」という判断で許可をもらえたというものです。
    新規で市街化調整区域での住宅建築が可能かどうかは、一瞬、無理そうに思う方が多いと思いますが、ある一定の条件を満たせばクリアできるということです。
    ちなみに、許可までに要した期間は事前に工務店さんが市関係部局との協議を行なってはいましたが、許可を提出してからある不可抗力もあって約1.5ヶ月かかりました。

    2、水路占用許可と水路工事施工承認
    法律上、敷地は道路に接道しなければなりません。今回はこの道路と敷地の間に水路があり、道路に接道していないことになるため、水路を占用させてもらって接道させるという水路占用許可を受けました。(水路は道路の一部ではなく独立した土地ということ)
    それと、その水路に宅内の雨水を放流させるために水路に排水管を接続させる工事がある訳ですが、その水路を管理している市にその工事の承認をもらう水路工事施工承認申請。水路の管理は市が行なっていますが、使用している方は別に権利者がいるので、事前にその水利権者に同意をもらって申請を行います。今回は工務店さんに動いていただいて、その水利権者が不明ということが分かってその旨を市に報告して同意に変えてもらいました。
    一見、道路の側溝に見えても水路の場合があります。不動産会社や公図、市に問い合わせして事前に確認しおいた方がよいです。また、接道の位置や幅も制限を受ける可能性があります。オープンな水路の場合、乗り入れ用の蓋ができる範囲が限られていたりと計画に影響する場合があるので事前に確認しましょう。

    3、長期優良住宅
    住宅を新築或いはリフォームする際に様々な融資や補助があります。今回は、融資上のメリットが大きいということで採用された長期優良住宅。耐震等級や省エネ等級、維持管理等級、劣化対策など一般的なものより手厚くした仕様にする訳ですが、やはり、これも申請ごとが多段階的にあります。まずは、評価機関による「長期使用構造等の確認」、市への確認書、工事完了後の認定申請、そして認定通知書という流れです。おそらく、ほかのZECHや認定住宅を申請する場合も同じような段階的な手続きを行うことになるでしょう。ちなみに、着工前に済ませる前記の「長期使用構造等の確認」の審査はGWを挟みましたが、約1ヶ月かかりました。

    <雑考>
    長期優良住宅のみならずさまざまな評価を受ける認定住宅は、仕様を上げるためにコストと手間がかかります。今回の件を振り返って考えてみると、本来、住宅へ求めるものは自由であるべきと思うのですが、建主さんの希望や価値より先に制度や融資上からその選択しかないような状況に外堀をかためられているという印象をうけます。住宅の性能をあげることはいいことだと思いますが、その方向性の判断がなんらかの不可抗力によって仕向けられているという背景に違和感を感じます。

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    TECTURE MAG 掲載