低温乾燥木材

    ちょっと木材の紹介です。一般的に、伐採してまもない木材は、反りや収縮などの変形があるためそのままでは使用できません。特に建物の主要な柱や梁などの構造材は、その問題点をなくすため十分に乾燥させて使用します。その乾燥させる方法は大きく2種類。

    1. 人工乾燥によるもの KD材
    2. 天然乾燥によるもの AD材

    KD材は、一般的によく使われているもので、高温の釜で強制的に木材を乾燥させます。乾燥させるのに時間が掛からないので木材の品質上、重視される含水率を抑えられ、発注してから短時間で納品できる工期的メリットがあります。ただし、木材の内部ひび割れや脂身を損なうとの構造的なデメリットが指摘されています。一方、AD材は、昔ながらの方法で、伐採後自然に乾燥させるので時間がかかりますが、KD材で失う木の本来の性能が維持できるため「しなり」のある構造的メリットがあります。双方にはメリットとデメリットがあり、何を重視するかによって選択が変わってきます。

    福岡市の住宅(IHT)では、本来の構造的性能を優先させるためAD材の可能性を探りました。しかし、このAD材を積極的に持ち合わせているところになかなか行き当たりません。そんな時、構造設計事務所の古市設計室の古市さんから日田木材森林組合経由で坂本製材さんを紹介してもらい、すぐに問合せ。そこは、完全な自然乾燥ではありませんが、40度から50度の低温で乾燥させる「低温乾燥木材」を扱っているとのことで、木の性能についてもAD材に近い状態。そして、納期も約3週間で工程的には問題なく、出荷時の含水率や寸法精度についても問題ない感触を得ました。

    ただし、問題は流通コスト。一般的には、KD材が普及しており、プレカット業者さんにかかるコストは木材自体の材料費の割合も高く、取り扱う木材が変わるからといって全体コストはあまり変わらない。製材屋さんから出荷される木材自体のコストは下がるのに、トータル的に高くついてしまうという非常に残念な不本意な結果で、流通ラインを構築しないと解決できない難しい問題でした。その後、低温乾燥のことや不十分ではありましたがコストのことをクライアントと協議し、構造的メリットを優先させて採用する方向で判断していただきました。そこで実際に製材所を視察することに。

    クライアントと工務店さんと私の三者で日田の坂本製材を訪問。
    実際の低温乾燥の窯。乾燥中でしたがドアを開けても高温でないため問題はありません。木材からの水分が蒸発中で、内部は生暖かい空気。除湿された水分はドレンにて外部に排水するしくみ。
    乾燥が終わった木材。確かに顕著な割れは見当たりません。(右上はKD材とのこと)

    やはり、百聞は一見にしかず。クライアントと工務店さん、私設計者の三者で実際の低温乾燥された木材をみてそして坂本さんの説明をうけ、確信を得ることができました。製造者の坂本さんご自身の熱心さや誠実な姿勢も伝わってきました。低温乾燥材の確認後は、工場や倉庫を再利用した役物保管庫の案内もしていただきました。
    大変、お世話になりいろいろありがとうございました。(坂本製材:日田市天瀬町馬原)

    前の記事

    廃プラスティック

    次の記事

    終盤です